JR北海道、全線の半分が維持困難

JR北海道の島田社長は18日、運営する路線のうち10路線13区間が
JR単独では維持困難であり、抜本的な見直しを行うと表明しました。
その路線・区間の延長は 1237kmに及び、JR北海道全線の半分に当たります。
バスへの転換や、自治体が一部施設を所有するよう地元と協議するとしています。
言うならば、もはや公共交通としての役割を果たすことができない、
赤字路線の放棄と地元負担を求めることを表明したのです。

文章が長くなったので目次を示します。
1.JR北海道の経営状況
2.維持困難とされた10路線13区間について
3.JR北海道30年の情勢の変化
4.いかにして鉄道を残すことができるか

1.JR北海道の経営状況

今回の表明に先立ち、JRは11月4日、昨年度の北海道全28路線の
営業損益を公表しました。これによると、全ての路線が赤字であり、
営業損益は413億円のマイナス、18期連続の赤字です。
毎年300~400億円の赤字ですよ!
100円の収入を得るのにかかる費用「 営業係数 」は155(円)、
つまり、100円儲けるのに55円ずつ赤字が積み上げられたことになります。
営業係数が最も大きかった路線は、この12月に廃止される留萌線の
留萌―増毛間で、営業係数は2538。それでも、
廃線を惜しむ鉄道ファンが多く訪れたので、前年度の半分になったそうです。
北海道の路線は、多かれ少なかれいずれも赤字です。

そもそも、国鉄の分割民営化の時点から北海道の経営が厳しいことは予測されました。
JR旅客6社のうち、いわゆる「3島会社」は経営困難が予想されましたが、
今や九州は株式上場を果たし、北海道と四国だけが大きな赤字を抱えています。
(ちなみにJR貨物も上場に向けて準備中だそうです)

過疎化が進む広い北海道では、乗客数や密度など鉄道の経営効率が悪く、
さらに、冬は吹雪で運行不能になるなど、雪と低温の過酷な条件により
施設を維持したり運行を確保するために多くの経費がかかります。
このため、政府は経営安定基金を設け、その運用益で赤字を補填するよう
措置しましたが、バブル崩壊と低金利により期待する運用益は得られませんでした。
JRが使える資金は少なくなり、赤字がさらに拡大しました。

赤字体質のJR北海道は常に資金不足で、それが安全面にしわ寄せされ、
車両火災など大きな事故やトラブルが続発しました。
このことが、利用客の信用を失い、JR離れをさらに招いた一因と思われます。
JRは経営コストの削減や資産の売却など、それなりの努力を行ってきましたが、
経営費用の削減はほぼ限界までし尽くされたと評論する人もいます。
国の支援を受けて資金繰りをしてきましたが、もはや限界。

島田社長は、「このままでは2019年度末に安全資金が確保できなくなる」、
「民間企業として維持できるレベルを超える路線は、赤字削減や路線のあり方を
相談させてほしい」と述べ、抜本的な路線見直しへの理解を求めました。
しかし、地元自治体からは「採算性だけで公共交通の存廃を判断していいのか」、
「財政が厳しいので経費を負担できない」と反発の声が上がっています。

2.維持困難とされた10路線13区間について

このたびJR北海道が「維持困難」としたのはローカル線10路線13区間。
このうち、石勝線の支線、新夕張-夕張間は、夕張市が代替交通の整備などを
条件に廃線を認めています(JRの提案を待たずに廃線を申し出、地域交通を
整備しようとするのは夕張市の英断だと思います)。
日高線の鵡川(むかわ)-様似(さまに)間は、昨年1月の高波災害から運休が
続いており、今年の台風でさらに被害が拡大し、復旧に必要な費用は86億円、
その負担や運営形態のあり方について協議会で検討されています。

JRが廃止を考えているのが3区間。
これらは、輸送密度(1日1km当たりの利用者数)が200人未満と少なく、
バスへの転換を図る方向で地元と協議するとしています。
残りの8路線・区間は、輸送密度が200~2000人の区間で、
JRは「上下分離方式」の導入を検討するとしています。
上下分離方式とは、線路、駅、車両などを地元自治体に所有してもらい、
JRは列車の運行のみを行うというものです(欧米では、政府や自治体がインフラを
所有し、列車の運行は公的企業などが行うのが一般だそうです)。
鉄道を存続するなら、自治体はかなりの経費を負担しなければなりません。

この8路線には北海道の基幹路線が多く含まれます。

旧国鉄の分割民営化の前に多くの赤字路線が廃止されました。道内では22路線、
1456kmがなくなりました。わずかに生き残ったのが現在の基幹線です。
もしこれらがなくなれば、北海道の北と東から鉄道が消えてしまいます。
私の地元、網走北見地方の石北線(旭川-網走間)と釧網線(釧路-網走間)も
対象で、もし廃止となれば、あの広大な地域から鉄道がなくなってしまいます。
日本一のタマネギ産地、北見からのタマネギ列車はなくなってしまうのでしょうか。

鉄道は地域の骨格、人や物を輸送する動脈です。
これがなくなれば地域も街もすたれていきます。
私はこれまでに廃止された路線の市町村でよく見てきました。
8路線がなくなれば、もはや北海道の骨格とは言えなくなるでしょう。

JR北海道はさらに、北海道新幹線が札幌まで延伸した時に、
併行する函館線 函館-小樽間を経営分離するとしています。
また、第三セクターの「北海道高速鉄道開発」が線路の一部を所有する宗谷線と
根室線の2区間についても、将来的に地元の負担増を求める方針のようです。

3.JR北海道30年の情勢の変化

JRが発足して来年で30年。情勢が変わったことは確かです。
北海道の人口は札幌圏を除いてどんどん減少し、地方の過疎化はさらに進みました。
JRの主な利用客である学生は少子化で減少しつづけています(なお、
北海道は定期運賃より観光客の利用に頼るところが大きいといいます)。
ローカル線の主な利用客は、学生や病院へ通うお年寄り、一時期の観光客です。
JRは札幌圏と大きな都市間の輸送に特化していきました。

一方で、高速道路や道路網の整備が進み、自家用車の利用が増えました。
JRと併行する道路が快適に走れるようになり、ドア・ツー・ドアで
家族利用や時間の使い勝手の良いマイカーの利用が増えたのです。
また、長距離バスの利用が増えています。バスの方がJRより料金が安く、
夜行運行や停車場所の数など利便性のいい場合があるからです。
JRの利用は減っていきました。

さらに、困ったことにJRでは施設・設備の老朽化が進んでいます。
築100年以上のトンネルや、古い橋がいまだに使われていたり、
ディーゼル車両の相当数が30年以上の古いものだそうです。
レールや枕木の保守・更新が十分行われないことが脱線事故につながりました。
安全に関わることで、事故の教訓から、もちろん補修等は十分に行われるように
なったでしょうが、JRは抜本的な老朽化対策に充てる資金の余裕がありません。

こうしてJRは利用客が減少し、経営はますます苦しくなりました。
ローカル線の本数を削減したり駅を廃止したりしていますが、
利用者の不便を煽ってさらにJRの利用を減らしています。
確かに、JR北海道を存続させるためには根本的な構造改革、
赤字の大きな路線の見直しが必要かもしれません。

4.いかにして鉄道を残すことができるか

今回を機に、地域交通のあり方を真剣に考えなくてはならないと思います。
鉄道を残すのか、残すとすれば経費負担をどうするか。
鉄道の安定収入をどうやって確保するか。
バスや第三セクターによる鉄道、場合によっては乗り合いタクシーなど、
地域交通の体制を地元が面と向かって考える時だと思います。

鉄道を維持する場合に、経費の削減がもう限界だとすれば、
考えられるのは運賃の値上げです。
直接の受益者(利用客)に負担の一部を担ってもらうということです。
末期的な経営状態にあるJR北海道を存続しようとするなら、
運賃の値上げはやむを得ないのではないでしょうか。
運賃は制度的な制約があるそうですが、冬季料金などがあってもいいと思います。

東洋経済の試算によると、JR北海道は現在の1.22倍の運賃で
収支均衡するそうです。この場合、札幌-新千歳空港間の運賃は
現在の 1,070円から 1,223円になります。
しかし、2019年度以降、国に融資を返済しなければならないことを
考慮すると1.35倍の値上げが必要だということです。この場合、
札幌-新千歳空港間は 1,358円になります。同紙は、
「安い運賃を残すのか、JR北海道を残すのか」と問いかけています。

北海道新聞は「地域の鉄道を考える」というコラムを連載しました。
この2回目(25日)で、石北沿線ふるさとネットワークの中川氏が
傾聴に値する提案をしていたので紹介します。
① 「ふるさと納税」を活用し、一部をJR支援に充てる。
② マイナス金利による資金調達。たとえば10万円を出資してもらい、10年後に
9万円を返済する。出資者は1万円損だが、自分が路線を維持していると実感できる。
(同様に、トラスト運動のように証券を渡して返済しない方法もあるかも)
③ JR貨物がJR北海道に支払う線路使用料の値上げ。
④ 地元自治体に地域交通の専門部署を置いて交通政策を検討する。

もう一つ、重要なことに北海道庁がどのように対応するかがあると思います。
このところ、北海道庁は新幹線や高速道路にばかり力を入れ、
JR在来線の存続については全く関与してこなかったように思います。

このたびのJRの「SOS」に対して、高橋知事は、
「徹底した管理コストの削減など最大限の自助努力」を求め、
「公共交通機関としての役割を十分認識し」、
「信頼関係を大切に拙速な対応を行うことのないよう強く求めます」と
コメントしました。全く他人事のようで当事者意識がありません。

道庁はJRに責任を丸投げするのではなく、北海道の交通ネットワークや
地域交通のあり方について、地域と一体になって検討すべきではないでしょうか。
今回、見直し対象とされた路線・区間の地元自治体は56に及びます。
これらが路線ごとにせよ、対応策をまとめることは困難でしょう。
道庁が、地元自治体の調整、JRとの調整、そして国への援助要請に
役割を発揮してくれることを期待します。

今の状況ではすべてのJRローカル線を残すことは無理かもしれません。
しかし、地域の基幹として維持すべき路線・区間はあると思います。
過去に廃止された路線、第三セクターになって遂に廃止された路線の教訓があります。
国や自治体が鉄道を支える方法はないものでしょうか。 2016/11/29

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「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
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