飛ばないテントウムシ

ナミホシテントウ 本日(6月19日)の朝日新聞に「飛ばないテントウムシ」の記事が出ていました。
「飛ばないテントウムシ見参! 逃げず サボらず害虫退治」というものです(標題ウマイ!)。
テントウムシは作物の害虫アブラムシを食べますが、
すぐに飛んで行ってしまって人が期待するほどアブラムシを食べてくれません。
飛ばないテントウムシがいればアブラムシ防除に利用できる可能性があります。
それが実現したという画期的なニュースです。この記事をフォローします。

飛ばないテントウムシがいれば、アブラムシの作物被害を減らすことができる。

アブラムシは農作物の重大な害虫です。わずか3mm程度の小さな昆虫ですが、
大量に群生して野菜やジャガイモや花などに取り付き、
作物の汁を吸って弱らせたり新芽を作りにくくしたりします。

家庭菜園や鉢植えの草花がやられた経験をお持ちの方も多いでしょう。
作物の収穫量が減るだけでなく、トマトなどでは品質を悪くして
商品にならなくしてしまうこともあります。

さらに重要なのは、アブラムシがウイルスの感染原因になることです。
アブラムシが媒介して作物のウイルス病を蔓延させます。
しかも、アフラムシは風に乗ってどこからでも飛んで来ますので
侵入を防ぐことができません。ハウス栽培など密閉した所にも
簡単に入ってきてしまいます。農業にとって最悪の害虫の一つです。

そのアブラムシの最大の天敵がテントウムシなのです。

テントウムシ。よく知られているのはナナホシテントウですが、
日本に古くからいるナミホシテントウなどたくさんの種類があり、
多くがアブラムシをよく食べます。
ナミホシテントウは、成虫、幼虫ともアブラムシを1日に100匹も食べるといいます。
いわば主食です。
テントウムシをアブラムシ対策に利用しようという試みはこれまでも行われましたが、
成虫のテントウムシは羽があるのですぐにどこかへ飛んで行ってしまいます。

畑に放すとたちまちいなくなってしまいますし、ハウスに放すと
多くが天井にへばり付ついて期待する仕事をしてくれません。
飛ばずにアブラムシを食べ続けてくれるテントウムシがいればいいのですが。

飛ばないテントウムシの研究は、広島県にある農水省の研究機関で
続けられてきました(私もこの研究所の一般公開で見たことがあります)。
正式な名称を言わないと失礼なので紹介しますと、独立行政法人
農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センターといいます。
あまりに長いので新聞でも省略されていることが多いです。

この研究機関では、テントウムシの飛翔能力の研究から始まり、
日本全国のナミホシテントウを集めて調べ、飛翔力の少ないテントウムシを選抜し、
それを交配すること35世代で、ついに飛ばないテントウムシを育成しました。
実際に農場で試してみると、飛ぶ系統に比べて明らかに
アブラムシの防除効果が認められました。

飛ばないテントウムシは、当然ながら農場に残る数が多く
(歩いて逃げてしまうものもいるようですが)、
ワタアブラムシの密度を低く抑えることに成功したということです。

兵庫、大阪、奈良、和歌山、徳島の研究機関でも試験したところ、
露地の畑ではコマツナ、キク、シシトウにおいて、ビニールハウスでは
イチゴ、コマツナ、キュウリにおいて高い防除効果が認められました。
また徳島では、飛ばないテントウムシは幼虫段階で利用する方が、
成虫よりも低コストかつ高い防除効果が見込めるという試験結果が出ているそうです。

さらに、大学と民間を含めた共同研究で人工飼料や品質管理法が開発され、
飛ばないナミテントウの大量増殖の方法が確立されました。
すでに民間メーカーから販売が開始されています。

現在、農作物に使用できる生物農薬として「農薬」登録をする準備中ということです。
生き物のテントウムシが農薬になるのかと不思議に感じる方がいるかもしれませんが、
農薬は化学農薬だけでなく、重曹、食酢のように殺菌効果のあるものや
天敵の生物も含まれます。

ただし、効果や安全性が認められ行政的に指定を受けることが必要で、
その指定があれば「農薬」として販売できます。
もっとも、テントウムシが安全性に問題があると思う人はいないでしょうし、
農薬と表示しなければ今でも販売や使用はできます。

「飛ばないテントウムシ」と聞いて、私は羽の小さな商業用ブロイラーを
想像してしまいましたが、飛ばないテントウは羽のない奇形ではなく、
映像を見るとごくわずかですが飛ぶ力はあるようです。

詳しいことを知りたい方は「むしむしコラム・おーどーこん」(応用動物昆虫学会) http://column.odokon.org/2013/0228_160123.php
をご覧ください。

農業は作物の病害や害虫との戦いでもあります。
日本では昔から、病害虫のないことを祈願する祭が行われたり、
イネの害虫退治に水田に油をはって夜松明を持って
害虫を油に落とす作業が行われたりしました。

化学農薬の登場により、一時は人間が勝利したように思った瞬間もあるのですが、
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」で指摘されたように
安全性で手痛いしっぺ返しを受けました。
生態系の天敵などを使った病害虫の防除法は、即効的ではありませんが、
安全で長期的に見れば効果的でもあります。

天敵以外にも、日本では、不妊虫を使って沖縄諸島のウリミバエや
小笠原諸島のミカンコミバエの害虫を生物的に駆逐した成果があります。

このたびの飛ばないテントウムシがそれに続く成果を得られるよう期待しています。 2014.06.19

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「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
カテゴリー: サイエンス, 未分類, 農林業・自然 タグ: , , パーマリンク

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