電王戦 -人間 vs コンピュータの将棋対決

最近、コンピュータ将棋がものすごく強くなっています。
始め登場したころは素人でも勝てるくらい弱いものでしたが、それから
ぐんぐん「棋力」が上昇し、今では一流のプロ棋士と渡り合うほどです。
将棋プロ棋士とコンピュータソフトが対局する「電王戦」が毎年行われています。
これまでは、人間がコンピュータにコテンパンに負け越していましたが、今年の
「電王戦FINAL」で始めて人間が勝利しました。でも必ずしも喜べる内容ではありません。

「コンピュータは計算が速いから、将棋をやらせたって当然強いだろう」と
思う方がいるかもしれませんが、そんなに簡単ではありません。

将棋は、一手一手、相手の指し方や全局を見通した判断が必要になります。
自分の戦法と相手の戦法をうかがい、情勢分析(優勢・劣勢、終盤では
今相手に手を渡すと負けるとか)の判断のもとに、攻めるか守るか、
どこに駒を配すればいいか、次の一手を判断しなくてはなりません。

その判断は、理屈ばかりでなく人間的な感性や直感が大きいようです。
「羽生マジック」のように、要所でのひらめき(思いもしない妙手)があります。
何かの記事で見ましたが、羽生名人が将棋盤を見る時、名人の頭の中では
理性を司る左脳よりも、感性を司る右脳の働きの方が大きいそうです。

コンピュータが将棋を指すということは、次に可能な何万もの手の中から、
局面や相手の指し方に応じて適切な「次の一手」を選ぶことです。
それも、これからの展開を予測しつつ「勝ち」につながる一手でなければなりません。
コンピュータにそれをさせる思考方法のプログラム全体がコンピュータソフトです。
これはもう「人工知能」です。

1970年代、人工知能の研究者、瀧澤武信・早大教授(コンピュータ将棋協会会長)が
取り組み始め、75年に完成したものが世界初のコンピュータ将棋といわれます。
やがて多くの人がコンピュータ将棋を開発するようになり、ゲームソフトも市販されます。
コンピュータソフト同士の対局や選手権が行われ(今年5月の大会は第25回)、
ソフト、ハードの進化とともに棋力が著しく向上しました。
2000年代にはアマチュアのトップクラスに勝つまでになりました。

将棋プロ棋士に「コンピュータがプロを負かす日はいつか?」と聞いたところ、
羽生名人は2015年、森内9段は2010年、谷川9段は「自分が引退してから」
と答えたそうです。

チェスでは、97年に世界チャンピオンがコンビュータソフトに敗れました。
「人間がコンピュータに負けた!」というニュースは世界中に大きな衝撃を与えました。

将棋は、チェスに比べると盤の大きさや駒の種類・数が多く、しかも駒を取られると
相手の戦力として使われてしまうのでチェスより複雑です(今 桂馬を取られると
負けるということがあります。コンピュータ将棋はそれも考慮しなければなりません)。

2010年、情報処理学会は「名人に伍する強いコンピュータ将棋を完成した」として、
日本将棋連盟に対戦の挑戦状を突きつけました。
将棋連盟(米長邦雄会長)は「その度胸と不遜な態度に感服した」と挑戦状を受理し、
将棋プロ棋士対コンピュータの「将棋電王戦」が開始されることになりました。

第1回は12年、米長永世棋聖(故人、対戦時は現役引退)が、世界コンピュータ
将棋選手権の優勝ソフト「ボンクラーズ」と一番勝負で対戦しました。
結果、米長永世棋聖はコンピュータソフトに敗れました。

第2回からは、プロ棋士の中から選抜された5人と、コンピュータ将棋
選手権の上位5ソフトによる5対5の団体戦になりました。
第2回の13年は3勝1敗1持将棋でコンピュータの勝ち、第3回の14年は
4勝1敗でコンピュータの勝ちという、プロ棋士の大敗になりました。
棋士の心中には、たかが機械とあなどっていたところがなかったでしょうか。

「これはいかん」と思ったのでしょう、第5回今年の「電王戦FINAL」では、
将棋連盟はコンピュータに詳しい若手5名を送り出しました。
プロ棋士がまず2勝しましたが、それからコンピュータが2勝と持ち直し、
最終戦でプロ棋士が勝利して決着しました。

しかし、第2局と第5局のプロ棋士が勝利した結末は意外なものでした。
第2局では、プロ棋士が「2七角不成(ならず)」と指します。王手なのですが
コンピュータソフトは固まってしまって反応できず負けになりました。
普通なら「角成り」としてなんら不都合はありません。あえて「成らず」として
コンピュータソフトが対応できないことを知っていた人間側の勝利でした。

第5局では、プロ棋士がコンピュータを「ハメ手」(トリック戦法)に誘い込んで
勝利しました。この戦法はコンピュータソフトの開発者も承知していて、すぐさま
投了しました。わずか21手でした。
「ハメ手」というのは、それを承知している対局者なら容易に対処することができ、
逆に仕掛けた側の形勢が悪くなるような指し方です。

この2局はプロ棋士の研究の成果です。対戦前にコンピュータソフトが1週間ほど
プロ棋士に貸与されるそうですが、その間にソフトのミスに気づいていたのです。
もれ聞くところでは、通常に対戦したら10回に1回しか勝てなかったといいます。
コンピュータソフトの不具合を突いた人間の勝利と言えるでしょう。

そんなことで人間が勝利しましたが素直に喜べないところはあります。
コンピュータ将棋協会会長の瀧澤教授は、取材に応えて次のように話しています。

「人工知能がついに人間の頭脳を超えたか」という意見が多く聞かれるのですが、
将棋の世界に限って言えば、近々コンピューターがプロ棋士を上回るのは明らかです。
私はこの1年以内だと思っています。でも、それは、例えば
陸上選手が自動車と競争して負けてもしようがない、ということと同じです。
10年後には、コンピューターが強いと認識されて、人間と対戦するイペントは
なくなっているでしょう。

人間が将棋でコンピュータに負ける、悲しい気持ちがありますが、
おそらく将来はそうなるのでしょう。
恐るべしコンピュータ将棋!、畏るべし人工知能!。
将棋を通して得られた知識・データが、人工知能の研究に活かされれば
と思うだけです。何かやるせないトホホ。 2015/05/19

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konnaii について

「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
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