落語・小さんの「千春振る」

小さん千早振る映画「ちはやふる」が公開されると注目されています。
「千春振る」といえば、私は落語のことかと思いましたが、
末次由紀さん原作の漫画で、競技カルタを題材にした
人気少女マンガが映画化されたそうです。
今回は落語の方をご紹介します。

落語「千春振る」は、落語の演目としてはポピュラーで、
噺家ならほとんどの人が演じているでしょう。中でも、
私は柳家小さん(五代目)の「千春振る」が好きでした。

「千春振る」のもとは、百人一首にもある在原業平の歌です。
業平は、美女と言えば小町、美男と言えば業平と称せられた人です。
「百人一首の中でいい男の歌があったろう」、「ああ業平かい?」

「千早振る 神代(かみよ)も聞かず龍田川(たつたがわ)
韓紅(からくれない)に水くぐるとは」

冒頭「千春振る」は「神」にかかる枕詞。
「龍田川」は奈良県斑鳩近くに流れる川で、紅葉の名所として
知られているそうです。秋が深まるとその川を紅の葉が流れます。
こんなに美しい風景は神代の昔も聞いたことがない、
まるで韓紅のくくり染めのように川を染めて流れる、という歌です。
歌そのものはさして面白くありません。

落語では知ったかぶりのご隠居がこの歌を珍解釈をします。
「よく世間には、ものを聞かれて知らないてのは残念、
何とかこれをこじつけたいという人がありますな」。

ご隠居のところに、金さんが聞きに来ます。
娘たちが百人一首のカルタ取りをしていて、歌の意味を調べて
みようということになった。
金さんの娘が「千早振る」を調べることになり、出し抜けに
「おとっつぁん、この歌はどういうわけなの?」

「そういうことを聞くのは親不孝だよ。
忙しいから後で教えてやる、と家を出てきた。町内ブラブラして
帰(け)えりゃあ、向こうも諦めて帰えるだろうと思ったが、
アレはどこにも帰えらねえ、ウチの子なんですから。
歌のわけを言わなくちゃいけねえ。旦那、どういうわけなんです?」

「金さん、『龍田川』てのは、神田川とか隅田川とか
川の名だと思うかい? 実は相撲取りの名だ。
龍田川は一心不乱に修行をし、大関になりたいと
神信心、女断ちをした。茶断ち、塩断ちのアレだ。
そして見事大関になった。願ほどきということで、
客に誘われて吉原へ夜桜見物に出かけた。その時、花魁道中で
見かけたのが当時飛ぶ鳥を落とす勢いの『千早太夫』。
龍田川は一目見てブルッと震え、震えが3日止まらない。」

「マラリアですか?」
「一夜でもゆっくり話をしてみたいと千早を呼んだ。ところが、
千早は『訳あって相撲取りはイヤでありんす』と振られた。

女は千早だけではないと、妹女郎の『神代』に声をかけたが、
『姉さんのイヤなものはワチキもイヤでありんす』と
これも言うことを聞かない。
龍田川はつくづく相撲がいやになり、田舎へ帰って豆腐屋になった」

「何だかおかしな話ですねえ。立派な大関が豆腐屋ですかい?」
「何になろうといいじゃねえか。この人の両親が豆腐屋だった」

「家に戻ってみるとみすぼらしい店。両親に不孝を詫びて家業に励んだ。
5年経って、身上も立派になった秋の夕まぐれ、
一人の女乞食が、ボロをまとい杖にすがって店の前に立った。
『三日三晩何も食べておりません。どうぞ卯の花を恵んでください』
金さん、この女乞食を誰だと思う? これが千早太夫のなれの果てだ。」

「またおかしいや。花魁が乞食ですかい?」
「いいじゃねえか。なろうと思えば何にでもなれる。
花魁がみすぼらしい姿になって竜田川の店に現れたのも何かの因縁。
竜田川は、卯の花がやれるか、と女の体を突いた。
店の前に柳の古木と井戸がある。女乞食は柳に取りすがり、
やがて涙をハラハラこぼして井戸に飛び込んで死んじゃった。」

「じゃあ、井戸から幽霊になって出てくるという話?」
「いや、これでおしまい。一番始めが『千早振る』だろ」
「あ、これあの歌の話ですか。」

「千早が竜田川を振ったから『千早振る』だろ。
妹女郎の神代もいうことを聞かないから『神代も聞かず竜田川』
5年経って竜田川の店に現れた千早に卯の花をやらなかったから
『カラくれない』
井戸に飛び込んだから『水くぐるとは』」

「『水くぐる』はわかりますが、最後の『とは』は何です?」
「後でよーく調べたら『とは』は千早の本名だった。」

百人一首を題材とした珍解釈やパロディは江戸期に盛んに
行われたそうです。このほかに有名な落語には
「崇徳院」などがあります。また機会がありましたら紹介します。
2016/03/20

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「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
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落語・小さんの「千春振る」 への1件のフィードバック

  1. 匿名 のコメント:

    中途半端な文字起こしは止めて頂きたい

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