生け花で使われるお花について

あなたの町の農業に生け花で使う花の生産を取り入れては
いかがですかという話をします。
先日、「生け花について」という記事でちょっと触れました。
生け花で使われるお花(花材といいます)は少し特徴があります。
花の種類であったり、求められる性質などです。
ですが、生け花の生徒さんたちが花材が欲しい時に
お花屋さんでは望むものが手に入らないことが多いのだそうです。
このお花をあなたの町で生産するのはいかがですかという話です。

ちょっと長いので例によって目次を付けます。
目次
 1.生け花の花材の需要と価格 -大きな市場、魅力的な高価格
 2.生け花の花材の特徴
  (1) 花の種類 -生け花に特徴的な花材など
  (2) 野の花を求める -「葉っぱビジネス」になるかも?
  (3) 新しい花材を求める -生け花のチャレンジ精神
  (4) 求められるわがままな品質
 3.花材生産で注意すべきこと いくつか

1.生け花の花材の需要と価格 -大きな市場、魅力的な高価格

生け花に使われる花なんてたいした量ではないとお考えの方もいるでしょうが、
前に紹介したように、生け花のお弟子さんは2000万人以上と言われ、
フラワーアレンジメントなどの生徒さんを加えると生け花人口は相当な数と考えられます。
その人たちが、毎週のお稽古や花展のための花材を求めています。
切り花の流通量の約1割が「お稽古用」と言われています。
その取引額は年1000億円を超えるという試算もあります。
あまり注目されることがありませんが、生け花は大きな花の市場なのです。

生け花の花材はかなり高い価格で取り引きされます。
人に見せるためのお花ですから、花の種類や色などにはこだわりますが、
値段にはあまりこだわりません。
お稽古に必要であれば、生徒さんたちは少々値段が高くてもお花を買います。
初心者のお稽古ですと、1回に使う花材費は1500円から3000円、
上級者になると1万円以上ということもよくあるそうです。

花材はお花屋さんで買うことが多いのですが、望む花材が店にないことが多いそうです。
地元で調達できなければ、たとえば京都の花材専門店(生け花流派の会館にある店)に
注文します。その店は会館にお稽古に来る生徒さんたちは必ず利用しますし、
地方の先生や生徒さんもこの店に注文します。
他店と競合することがないので商品は はんなり(花あり)高価です。

しかし、専門店のたいしたとろで、注文した花材が手に入らないことはまずないそうです。
真冬にヒマワリの花が必要になったことがあったそうですが、そんな無理な注文でも
京都の店から買い求めることができました(ただし高価で)。

生け花では季節に先がけて花材が求められます。
モモとかサクラがわかりやすいですが、普通の時期よりも早く咲いたものや
蕾(つぼみ)を着けた花材が求められます。季節を先取りして飾りたいですからね。

京都や江戸など生け花の盛んだった都市の近郊では、古くから
そういった需要に応える農家や花の栽培技術(結構難しい)があったそうです。
近年は、都市の拡大に伴い、近郊の農地や農家が少なくなり、
生け花のそういう需要に応える花材の生産が少なくなっているそうです。
すると、早く咲く花材が欲しくても地元の花屋さんでは手に入れることが難しくて、
これまた京都などの花材専門店に頼ることになります。しかし高価で。
そういう生け花の花材の需要があなたの地元にあるのです。
ビジネスとしてちょっと魅力的だと思いませんか?

2.生け花の花材の特徴

生け花の花材の特徴についてご説明します。
始めに花の種類についてです。

 (1) 花の種類 -生け花に特徴的な花材など

生け花では、お花屋さんにある花の種類は何でも使われますが、
よく使われる種類としては、キク、カーネーション、バラ(切り花3大種)のほか、
ユリ、洋ラン、スターチス、カスミソウ、ガーベラ、トルコギキョウなどがあります。

生け花は季節の花を飾るものですが、季節にかかわらずよく使われる花材もあります。
小菊、カーネーション(スプレー)、バラ、ラン類、カスミソウなどです。
これらはお花屋さんの定番ですから、まあ入手するのは難しくないでしょう。

生け花に特徴的な花材として、カキツバタ、ハラン、フトイ、オオタニワタリがあります。
カキツバタは、生け花の生徒さんたちの間で「カキツ」と略称で呼ばれる
馴染みの深い花材です。「いずれアヤメかカキツバタ」、ハナショウブを含めて
どれも同じ仲間ですが、生け花のカキツは、花よりも主に葉を生けます。
春夏秋冬の生け方の違いがあり、お稽古用に1年を通して多く使われます。

ハランも生け花の伝統的な花材で、幅広の葉を重ねて組み立てて生けます。
ハランだけを使った生け花の試験があるように、お稽古になくてはならない花材です。
「生け花はハランに始まりハランに終わる」と言われているそうです。

フトイは水や夏のイメージを生ける時に必要な花材です。
横縞のある縞フトイが特に人気の花材で、本来は夏の花材ですが、
ほかの花材と組み合わせて季節に関係なく使われます。
オオタニワタリはシダの一種です。沖縄では自然の中でよく見ましたし料理も食べました。
緑の美しい葉でこれも生け花によく使われます。
これらの花材は1年を通して生け花の需要がありますが、
時期や地域によっては入手することが難しいことがあります。

季節によって多く使われる花材としては、
春は、ウメ、モモ、レンギョウ、コブシ、モクレン、チューリップ、ツツジ、
スイートピー、コデマリ、キイチゴなど、
夏は、クレマチス、ヒマワリ、アガパンサス、アヤメ、ハナショウブ、ガマの穂、
フジ、ハス、アルストロメリア、ダリア、リアトリスなど、
秋には、シュウメイギク、ススキ、キキョウ、リンドウ、ツルウメモドキ、ケイトウ、
コスモス、ナナカマド、ホトトギスなど、
冬は、スイセン、ネコヤナギ、ボケ、ツバキ、アマリリス、サンゴミズキ、サンシュユ、
ロウバイなどがあります。名前を聞くだけで季節感があります。

なお、生け花では季節は伝統的に旧暦で考えられ、たとえば正月は春です。
季節になればその季節の花材が多く求められます。
しかし、最近では本来の季節でなくても出回るお花が増えています。たとえば、
グラジオラスはかつて夏の花でしたが、今は冬の葬祭場にも多く飾られています。
栽培技術の向上によって季節に関係なく流通する花が増えており、
花の季節感が薄れることは何か寂しいものも感じますが、
逆に考えれば、真冬のヒマワリのように、栽培技術によって
季節はずれの花を販売できるチャンスもあるということです。

 (2) 野の花を求める -「葉っぱビジネス」になるかも?

生け花の花材の種類で特徴的なことを続けます。
一つは、野草や木や作物の種類を多く使うことです。
生け花は自然の花や草木を家に取り入れて季節を飾るものです。
アザミ、ナデシコ、キキョウ、オミナエシ、ワレモコウ、ガマ、ススキなどの
野の花や穂が使われます。
フトイ、シダ類(オオタニワタリなど)、エノコログサ、ギボウシ、ヤツデ
などの野の草や葉、
マツ、コブシ、ヤナギ、ムラサキシギブ、ナナカマド、ツルウメモドキなどの
木の葉や枝や実が使われます。
また、イネ、ムギ、アワなどの作物の穂(イネは正月飾りに欠かせない花材です)、
ナス(アカナスなど)、トウガラシ、オクラなどの実、リーキ(ネギの仲間)、
アスパラガス(葉)、キウイ(つる)なども花材として使われます。

野の草花を採ってきて飾ることを生け花では「山取り」というそうですが、
今では山取りはほとんど行われず、ほぼすべての花材がお花屋さんから購入されます。
ということは、山野の草木や農業の作物が花材として売れるということです。
それを農家で生産したり山取りして販売できるということです。
徳島県上勝町のおばあちゃんたちがやっている「葉っぱビジネス」はまさにこれです。
今まで地域に普通にあって価値がないと思っていたものが商品になったのです。
同様に、生け花の花材も「葉っぱビジネス」になる可能性があるのではないでしょうか。

(3) 新しい花材を求める -生け花のチャレンジ精神

加えて、生け花の花材で特徴的なことは、珍しいもの、新しい種類の植物が
よく使われることです。
今ではお花屋さんで普通に扱われる花の種類でも、
生け花で使われたことから一般に流通するようになった種類があります。
フォックスフェイス、カンガルーポー、ワタ、ワレモコウなどです。
同様に、ストレリチア、グロリオサ、アンスリウム、オランダカイウ(カラー)、
フウセントウワタなども、生け花で使われなければ今ほど一般的ではなかったと思います。
生け花は、人の目に訴えるために「面白い」と思った色や形の植物を
積極的に花材に取り上げます。新しもの好きのチャレンジャーです。

私は、生け花の花材の名前によく学名や属名が使われることを不思議に思っていました。
コチョウランはファレノプシスといいますし、君子蘭はアガパンサスと呼ばれます。
アイリス、アリウム、コレオプシスとか、パフィオペディルム、ラグラス・オバータス
という花材名が普通に使われます。それそれ属名など学名です。
生け花で新しい花材が使われた時に適切な名称がなくて
学名で呼ばれたのが生け花の世界で定着したのだと思います。

最近でも、南アフリカやオーストラリア原産の植物、熱帯植物など珍しい植物が
花材として紹介されています。
生け花は、このように新しい花材を取り入れることに敏感なのです。
そういう花を農業生産に取り入れれば需要を先取りできるかもしれません。
さらに、そういう植物を試作して生け花の人たちに紹介するというのはどうでしょうか。

 (4) 求められるわがままな品質

生け花の花材で最も重要なことは品質です。花や葉の色や形が作家さんの気に入ること、
新鮮であること、花持ちがいいことが求められます。

生け花の作家さんが花材に求めることは、まず表現したいイメージに合った素材です。
季節の花材で、花や葉の大きさや色や形、葉のつやや斑の入り方、
枝の曲り方などがかなり細かく要求されます。
素材の形だけで表現できなければ、「ため」といって枝や茎を曲げたり、
針金を入れたり添えたりして造形されます。「立花」などはまさに造形の産物です。

また、「水揚げ」といって、生け花では花持ちをよくするための技術が極めて重要です。
花材によって水揚げのしやすさが異なります。花展のように一般に公開する際には
花材を新しいものに取り替えることが頻繁に行われます。
新鮮で花持ちの良い花材が求められます。
ただし、作家さんによっては、枯れたものや虫食いのある葉が求められることもあります。

生け花の花材にはそういう贅沢でわがままな要求があります。
花材を農業生産に取り入れるにはそういう要求にそれぞれ応えていくことが必要です。

でも、それに見合った収入があるとすればやりがいのある仕事ではないでしょうか。
私は女性の農業者に一番似合った仕事ではないかと思います。
力仕事でも、毎年やり方が決まった仕事でもありません。花材の需要などの情報を分析して
これから生産する花材や作り方を女性のセンスで決める、女性が農業経営に参画する
ぴったりの仕事ではないかと思います。

3.花材生産で注意すべきこと いくつか

以上、いろいろ述べてきましたが、花材生産の魅力を感じていたたけたでしょうか。
生け花の花材をあなたの地元で生産するのはいかがですか。
興味を持っていただいた方に、花材生産を始める際の注意点を
いくつか述べたいと思います。

花材を供給するためには、品質の良い花材をタイムリーに生産することが必要です。
そのためは、栽培技術と適切な施設、そして情報収集と判断が必要です。
栽培施設では、温度管理が必要でしょうし、花材によってはキクのように照明の管理が
必要な場合もあります。冷温保蔵などの施設も必要になるかもしれません。

何の花の種類を生産するか、いつ出荷するかが最も重要になります。
常に花材の需要や栽培技術などの情報を収集して栽培計画を作ることが必要です。
生産者の腕と裁量次第です。

ただ、今の花材の流通にはいくつか問題があります。
通常の生花市場を通るルートでは、長さなどの規格が決められていて、
生け花で必要な枝の長さが求められないことがあります。
また、ルートを通すことで日数がかって新鮮な花材が手に入らないこともあります。
価格が高くなってしまうことも問題です。
生産者と生け花の人の直通ルートができないものでしょうか。
生け花の流派などと協調して、花材の必要な時期と量などを協定できれば
もっとスムーズに望まれる花材を提供でき、生産者も楽になると思います。
取りあえずはインターネット通販が一つの方法かもしれません。

もう一つの課題は、求められる花材が多種多様で時期や量が複雑なことです。
その種類と量に1軒の農家ですべて対応するのはほとんど困難です。
複数の生産者が種類を分担するなどして、生産団地のように機能し、
ここに注文すればどんな花材も調達できるというようにすることが望まれます。

東京の近郊にはそういう団地がいくつかあります。
茨城県のある団地では、大きなガラス室を展示場と店舗にして、
切り花、鉢物、植木、芝など様々な植物を販売しています。
その周囲のたくさんのハウスでは今栽培している植物を見ることができます。
生け花以外のお客さんも多いのですが、生け花の人たちは、ここに来れば望む花材が
手に入るので東京から高速道路を利用して買いに来ます。
そういう需要に応える花材の生産体制が望まれます。

団地となると大がかりで、組合や行政などの支援が必要になるでしょうから、
まずは自分のできる範囲で、できそうな種類から、花材を意識した生産を始めては
いかがでしょうか。結構いけると思います。
切り花でなく鉢でも構いません。
ネットで見るとハランのポット1つが1500~3500円で売られています。
葉っぱ1枚が100円以上ですよ! 魅力的な商品と思いませんか。
私も土地と施設に目処があればやりたいと考えています。
もし花材生産に興味をもたれて、もっと情報が知りたいという方がいらっしゃいましたら
コメント欄からお申し出下さい。私が作成した花材ごとの諸情報をご提供します。
2015/02/06

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「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
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