アザラシ、かわいい? やっかいもの?

アザラシは北の海の人気者です。
くりんとした目や愛嬌のあるひげ面、陸上ではごろりと寝そべって動きの遅い姿、
しかし海中では自在に泳ぎ回ります。旭川市の旭山動物園では、
円筒の中を上へ下へ泳ぐアザラシの姿を間近に見ることができます。
人気者のアザラシですが、近年、漁業に大きな被害を及ぼしていて、
漁師さんから「やっかいもの」とされていることをご存じでしょうか。

アザラシは冬に北海道近海へ回遊してきます。
中には多摩川の「タマちゃん」のように迷い込むものもいますが。
北海道で漁業被害が問題になっているのは、ゴマフアザラシと
ゼニガタアザラシです。この2種類のことを紹介します。

ゴマフアザラシは、マンガの「ゴマちゃん」でも知られ、
子どもの時はまっ白で、小さい体がモコモコ動くのはとてもかわいいです。
ゴマフアザラシは流氷とともに北からやってきて、春先に子どもを産み、
天敵の少ない流氷の上で保護色の白い子どもを育てます。
これまでなら春の終わりには北の海へ帰って行きましたが、
近年、稚内や礼文島の沿岸に夏でも居残るものが増えています。

2003年の調査では3月に確認された数は300頭でしたが、
12年3月には3000頭になり、13年の夏には850頭が確認されたそうです。
それらが、夏の名産のタコを食い荒らし、岩場のフノリを汚して商品に
ならなくしてしまいます。被害額は約4億円といいます。

漁協と北海道は、夏のアザラシの数を減らすことを計画し、
15~16年に、ワナや銃での駆除、爆音による追い払いなどで、
17年夏の個体数を半分にしたいとしています。
ただ問題は、ゴマフアザラシが日本とロシアの間を回遊していることで
日本だけで対策しても効果が未知数なところです。
ロシアがアザラシ猟を止めたために個体数が増えたともいいます。
また、夏に北海道北部に居着くゴマフアザラシがなぜ増えたのか、
地球温暖化の影響か、原因はわからないそうです。

ゼニガタアザラシはそのタイプとはちょっと違います。
ゼニガタアザラシは、襟裳岬などの沿岸に年間居着いています。
アザラシは回遊するのが普通で、
同じ場所に留まるものは世界的にも珍しいそうです。

襟裳岬では、岩礁の上にいるアザラシをいつも見ることができます。
観光客が望遠鏡を覗いて「かわいい!」と叫びます。
地元にとっては大きな観光資源になっています。
ところが、これが深刻な漁業被害を及ぼしているのです。

サケの漁獲期に定置網に入り込んでサケを食べます。
網の中ですから、アザラシにしてみればエサの取り放題です。
太ったサケのおいしい所だけを食いちぎります。全部は食べません。
襟裳の漁師さんはこの食べ方を「トッカリ食い」といいます。
「トッカリ」というのはアザラシのアイヌ語で、ほっかいどう弁でも言います。
網を上げても、商品にならないサケが多く獲れることになります。
襟裳岬だけでもサケの被害額は4000万円に上るといいます。
他の地域や、タコ、アイナメなどの被害も多いと思われます。

数を減らすことができないかといわれるのですが、
問題なことに、ゼニガタアザラシは絶滅危惧種に指定されています。
世界的に数が減少して、襟裳岬でも70年代には150頭に減少しました。
しかしその後、捕獲できなくなったこともあり、数がしだいに増え、
現在目認できる生息数は600、研究者の調査では約1000頭との推計もあります。
現在の個体数が100年後に極端に減ることはないだろうと、
準絶滅危惧種にランクを落とすことが検討されています。

アザラシは、アイヌの時代から肉や脂や毛皮のために捕獲されてきました。
岩場の上にアザラシが寝転んでいるのはごく普通で、捕獲の目的以外
迷惑な存在ではなく、いわば共生してきたのだと思います。
それがアザラシを捕獲する必要がない時代になり、逆に高級漁獲物を荒らす
害獣といわれるようになりました。

人間の勝手といえば勝手です。数が少なくなったから保護するといい、
数が多くなったから迷惑だという。しかし漁師さんにとっては死活問題です。
アザラシを駆除するということが報道されたら、
「あんなにかわいい動物を殺すの?」という声が上がることも想定されます。

アザラシと人はどうやったら共生できるでしょうか。
襟裳などでは「アザラシとの共存を考える」会議や研究会が行われています。
2015/07/02

konnaii について

「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
カテゴリー: サイエンス, 未分類, 農林業・自然 タグ: , , , パーマリンク

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