たたら製鉄について -日本刀の素材「玉鋼」

「たたら製鉄」をご存じですか? 日本古来の砂鉄を使った製鉄法です。
宮崎駿監督の映画「もののけ姫」で、山の女たちが製鉄のためのたたらを
踏んでいたのをご覧になった方も多いと思います。
「たたら(踏鞴)」とはフイゴのことで、木炭を燃やす時に空気を送る装置です。
私が広島県にいた時、中国山地にたたら製鉄の史跡が多くあることを知り、
そのいくつかを訪ねました。たたら製鉄のことをご紹介します。

今回の文章は、やや論文調の硬くて長い文章です。
お気に召さなかったら読み飛ばしてください。
目次を示します。目次の3以降は、最下部のフリップを押して選択してください。
目次
1.日本の製鉄の原点
2.木炭の重要性 -自然破壊か
3.たたらの独自の社会
4.たたら製鉄の歴史と現在

1.日本の製鉄の原点

島根県の奥出雲(おくいずも)地方(雲南市、奥出雲町など)は、
かつて鉄の一大産地でした。
西洋製鉄が導入される明治前期まで、日本の鉄生産量全体の半分以上
(一説によると9割)をこの地方が担っていたと言われます。
奥出雲地方には、「鉄の歴史村」とか「鉄の道 文化圏」という
「たたら観光ロード」があります。

日本刀の素材である玉鋼(たまはがね)は、このたたら製鉄でしか
作ることができません。ハイテクと言われる現代の技術をもってしても
日本刀のための玉鋼を作ることはできません。
玉鋼の生産は、現在奥出雲の1か所のたたら製鉄所で行われています。

西洋製鉄法では、鉄鉱石と石炭のコークスが使われ、
その材料の輸入に便利なために製鉄所の多くは海岸近くにあります。
しかし、たたら製鉄は、原料に山砂鉄、それに木炭を使うため、
製鉄はすべて山の仕事でした。良質な砂鉄を産出し大量の木炭が調達できる
中国山地が製鉄の適地でした。

たたら製鉄では、原料の鉄は、山(花崗岩)を崩して
その土砂から砂鉄を採取します。
川砂鉄、海砂鉄が使われたこともあるようですが、大量の鉄を得るために、
江戸時代ころから山砂鉄がもっぱら使われました。その産地が中国山地でした。

砂鉄を取るには、岩石に大量の水を流して破砕し、比重の違いによって
沈む砂鉄を採取します。そのために、川からの水路などの大規模な施設が
作られました。これを「鉄穴流し(かんなながし)」といいます。
作業の時には大量の水と土砂が下流に流されました。
これが下流の川や水田や海に影響を及ぼしました。水質はもちろんですが、
なにしろ膨大な土砂ですから、下流域の宍道湖や中海を浅くして
地形を変えてしまうほどだったといいます。

江戸時代には、製鉄が出雲松江藩の産業として拡大しましたので、
鉄穴流しの弊害は、藩が仲裁に入って、上流と下流で契約を交わし、
農閑期の冬にだけ行われるようになりました。
農家にとっては貴重な現金収入のアルバイトだったそうですが、
寒い時期に水を扱うのは厳しい作業だったことでしょう。
鉄穴流しの跡地は、現在山奥に一つの遺構が残るだけですが、
これを見るといかに壮大な事業が行われていたかが伺われます。

2.木炭の重要性 -自然破壊か

砂鉄と並んで、たたら製鉄に欠かせない材料が木炭でした。
木炭は、鉄を溶かすための熱源だけでなく、酸化鉄の還元材として機能します。
「鉄山秘書」という古書には、「一に粉鉄、二に木山」が重要であると
記されています。砂鉄の次に、炭を焼くための山林が重要だということです。
大きなたたらが築かれるまでは、たたらは、一つの山を焼き尽くすと
次の山へ移動しながら炉が作られました。
「粉鉄七里に炭三里」という言葉があったそうです。
砂鉄の輸送は7里=28km可能だが、炭は(嵩張るため)3里=12km
運ぶのが限界だという意味です。
木炭が調達可能な所でしか、たたら製鉄は成り立ちませんでした。

現代の試算によると、一つのたたらで年60回製鉄を行ったとすれば、
必要な木炭の量は800トン、1年間に伐採する森林は60ha必要だったという
ことです。森林が再生するまでに約30年を要しますから、
たたら一つを存続するには1800haという膨大な森林が必要だったことになります。
たたら製鉄は昭和中期まで細々と続けられましたが、その時代にも、
製鉄のために「はげ山」になった山がたくさんあったといいます。
朝鮮半島や中国北部では、未だに製鉄によるはげ山が多く残っているそうです。
それだけ木材を切り尽くす産業でした。

このように鉄穴流しや森林伐採を見ると、たたら製鉄は、大きな自然破壊の
行為のように思われます。
映画「もののけ姫」でもそのようなメッセージがありました。
しかし、このため、たたら製鉄の関係者や出雲藩には、
30年単位の計画的な森林伐採や植林の意識が高まったようです。

現代の「たたら師」木原明さんは言います。
「もののけ姫は素晴らしい映画ですが、一つ誤りがあると思います。
たたらによって木を切っていくと自然が破壊されるといいますが、木を切っても、
それは30年から40年でまたそこに再生されます。ですから、自然界で木の
植生リサイクルの関係は決して壊れないです」。古くから伝えられた、
たたら師の方の見識だろうと思います。

konnaii について

「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
カテゴリー: 旅行, 未分類, 歴史, 農林業・自然 タグ: , , , , , パーマリンク

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