いつもでない一日 -NHKドキュメンタリー

8月1日、NHKで、戦後70年・北海道アーカイブス ~
時代を伝えたあの番組をふたたび~ という番組が放送されました。
(北海道地域以外では放映されなかったかもしれません)
2日連続で8本のドキュメンタリーを放送するものでしたが、
その最初に登場したのが、私の母校、北見北斗高校の強行遠足でした。
「いつもでない一日」という1970年に放送された忘れられない番組です。
強行遠足というのは、北見北斗高校の伝統行事で1日70kmを走る
マラソンです。高校生にとってはまさに「いつもでない一日」です。

出発は午前4時。毎年10月上旬に行われますが、
スタートの時は空はまだ真っ暗です。その時期の北見市は
もうかなり寒くて、吐く息は白く、その息が走る肩に霜になります。
そのあと日が昇り、走っているとだんだん体が熱くなってきます。
疲れとつらさをおぼえて、座りこんだり、脇の牧草地に
横になる生徒も出てきます。70kmはつらいです。

高校の行事で70kmを走るんだと友人に話したら、
ウソだろうと言われました。マラソンだって42km、普通の人なら
70kmを走れるか? 何のために走るんだ? というのです。
確かにそのとおりでしょう。

私が高校1年15歳の時には、伝統行事だから参加しなければ
ならないが、70kmは不安であり苦痛でもありました。
本当に自分が70kmを走れるか、体力も気力も不安がありました。

先輩からいろいろ話を聞きました。そんなに心配しなくていい、
結構やれるものだし、自分がそこまでできるということに自信がつく、
自分の限界を知ることが強行遠足だと。

ほかにもたくさんアドバイスを聞きました。
前日まではよく寝ておけ。体調を整えて身構えろ。
朝早くからだが、その前に飯は食うな。走って腹がくだることがある。
腹が減った時のために握り飯を持っていけ。
梅干しは疲れや体力のためになる。
ただし、それをブラさげて待ったら、気にはなるし、
ブラブラ動いて体力のムダになるから腰にしっかり結わえろ。

靴下は冬物の厚手を2枚はいて、それぞれに
石鹸を塗っておくといい。足にマメができないで走れる。
それに合う靴を事前に馴染ませておけ。
八巻を持っていけ。足が疲れて、よく つることがあるから、
八巻で足の上部を縛れば少し長持ちする。

NHKのフィルムでは情景がありませんでしたが、
私たちの時には、各クラスの女子が、八巻をデザインして作って
くれました。1m以上も長く色も派手なものです。
3年生の時には学年それぞれ3本の八巻を巻いて走りました。そして
足がつった時などは、その八巻で足を縛って走ります。

私はこの強行遠足を高校3年間走り、さらに大学に行ってから
もう一度帰って走りました。強行遠足はオープン参加もできるのです。
さらに、その翌年は大学のアニメーション研究会のみんなを動員して
記録映画を作りに行きました。NHKの「いつもでない一日」で
尽くされていない、走っている生徒たちの気持ちと、完走する過酷な意地、
それに、協力してくれる地域の人たちを表現したかったからです。

ちなみに、強行遠足に参加した生徒の完走率は男子で90%、女子は98%です。
コース中にいくつか関門があり、その関門に時刻までに到着できなかった生徒は
失格になります(バスで護送されます、後でクラスの中でえらい恥です)。
けれど、3年の時こんなヤツもいました。あと2kmくらいでゴールに
たどり着けるというのに、へたり込んでしまってもう足が動かないというのです。
あとで話を聞くと、「しかしオレは満足だ。ここまで走れたということ、オレの
限界はここまでと理解できたことに満足した」と言いました。

関門は、学校だけでなく、地域の皆さんの温かい支援で作られます。
朝早くから準備してくださり、走る生徒の方にすると、あの関門に着けば
うまいリンゴが食えるとか、甘いお汁粉があるとか楽しみがあります。
ショートカットした女子のコースと合流する関門が
一つありますが、ここに早く到着して女子と合流できる男子は1割ほど。
彼女と約束してペアで走ることはかなり難しいです。

強行遠足を自由に楽しむやからもいます。
運動部、野球服とかラグビー服とか柔道着で走るヤツもいますし、
ギターを抱えてフォークソングを弾きながら走るヤツ、
みんなで合唱しながら走るヤツ、「めざせ完走」と背中に書いたり
追い越し禁止のマークを張ったり、ベトナム戦争反対と書いている者もいました。
中にはバイクを使って次の関門までズルをしようとする不届き者もいました。

完走した人には完走バッヂが送られます。このバッヂのデザインは
毎年生徒の公募で行われます。さらに、3年間完走すると3年完走バッヂが
与えられます。都合4つのバッヂを持っていることは今でも私の誇りです。

5年目の映画作成の時に、私が、杖をつきながらゴールを目指そうと
歩いている生徒を撮影している時に、彼にこう言われました。
「撮影するのは勝手だけど、実際に走ってこの大変なことを感じてみろよ」
私も走っていた時に感じたまさに実感です。
「私だって、去年までこのコースを4年間走った」と言ったら、
彼は私の顔を見直しました。

強行遠足は若い高校生には試練です。
しかし、走り抜いたという達成感と、自分がこれほどできるんだ
という掛け替えのない経験を得ることができました。
最近は交通事情など、強行遠足に問題が生じているようですが、
できれば続けてほしい伝統行事だと思います。 2015/08/06

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konnaii について

「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
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