「件(くだん)の母」についての話-終戦記念日の今日

今日8月15日は終戦記念日、この日に当たって変な話を紹介します。
標題を見て何のことだろうと思った方が多いと思います。
「九段の母」ではなく「件の母」。にんべんに牛と書いて件(くだん)といいます。
用件が1件2件というふうに使われますし、「よって件のごとし」というのは
昔の証文などの常套句です。落語でもオチに使われる話があります。
ところが、件が実在した?というちょっと恐い話をします。

私が中学の時、少年マンガ誌で石森章太郎の「くだんのはは」という作品を見ました。
後になって、これが小松左京の原作だったことを知りましたが、
石森の絵と内容が強烈に印象に残っています。
マンガも小説も今は手元にないので、うろ覚えの内容を紹介しますと次のようです。

太平洋戦争末期、兵庫の高級住宅地に住んでいた主人公の少年(小松左京の
原体験と思われます)は、空襲で焼け出されて、家政婦さんのツテで
大きなお屋敷にお世話になります。

このお屋敷が不思議な家で、女主人と、その子どもらしい姿を見せない
女の子だけが住んでいるのですが、周りがどんなに戦争で困窮しても
何の不自由なく裕福に暮らしています。

姿を見せない女の子は、夜になるとヒーンヒーンと泣くことがあり、
何かわからないお粥のような食べ物や大量の包帯が毎日届けられます。
どこから収入があるのか、また空襲にあうことを全く心配していないので、
主人公はこの家をアメリカのスパイではないかと疑り始めます。
「憲兵に訴えてやる」と怒鳴ったこともあります、
それほど周囲の状況と異なったお屋敷だったのです。

そして終戦の日、主人公はやり場のない怒りのまま女主人を問い詰めます。
女主人はあの女の子のもとに連れて行きました。
主人公は、ヒーンヒーンと泣く角をはやした牛の顔の女の子を見ました。

女主人の説明では、
大きな災害の前にそれを予言する子どもが生まれることがあり、
それが角を生やした件(くだん)である、件は災害を予言すると死んでしまう、
その代わり家に繁栄を授けてくれる、というのです。

女の子は数日前に「たくさんの人が死ぬ」と予言したそうです。
東京かと聞くと「もっと西」、大阪かと言うと「もっと西」と答え、
そして広島と長崎に原爆が落とされました。
主人公の最後の言葉は、「誰かあの食べ物の正体を教えてくれないだろうか、
私に産まれた最初の子に角が生えていた」。

今で言えばホラー仕立てですが、当時は怪奇小説と呼ばれました。
石森の絵を見た時と小松の文章を読んだ時、正直私はブルっと身が震えました。
「件」について少し調べてみたところ、件は西日本を中心に伝承されている話で、
牛の体に人の顔の怪物(小松の作品は逆ですが)、人語を解し、
やはり予言をするそうです。予言の後、間もなく死んでしまうという伝えもあります。
内田百閒に「件」という小説があり、水木しげるも妖怪「件」を描いているそうですが、
どちらも小松の作品とは関係ないようです。

私が石森の作品を見た当時、友人に「くだん」って知ってるかと聞いたところ、
友人は、「確か、東京でたくさんの人が戦争で亡くなった所じゃないか」と答えました。
当たらずとも遠からず、東京九段の靖国神社は亡くなった日本兵を祀る神社です。

小松の作品名は「くだんのはは」とひらがなですが、これは戦前の歌「九段の母」に
かけたものでしょう。九段の母は靖国神社に参る母親を歌ったものです。
靖国神社について今回は述べません。終戦記念日ですが、安倍首相の参拝が
いろいろ取りざたされていますし、皆さんも注目されていると思いますので。

昨日のTBS系TVで、近藤さんという94歳の旧日本兵が、沖縄戦を戦った悲劇と、
ところが中国戦では加害者を経験したという証言を
ずっと続けられてきたことが紹介されていました。
よくぞ伝えていただきました。その勇気に感謝し、おそらく最後の証人であろう
そのことばに耳を傾けなければならないと思いました。

話変わって、私の印象に残っている映画で、岡本喜八監督の
「日本のいちばん長い日」という作品があります。
終戦まさに直前、ポツダム宣言を受け入れる御前会議から、
天皇の玉音レコードを放送するまでの軍部と政府の壮絶な1日間を描いています。
この映画を観た時、私は、前線で戦っている兵士とはいっさい関わりなく、
戦争はこうして上層部だけで終わるんだなと、何かやるせない気持ちに
なったことを覚えています。
戦争をする国、戦争を起こす国、戦争に関わる国に、二度となっては
いけないと思った終戦記念日です。 2014.08.15

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konnaii について

「こんないいオヤジ」 こと 今内祥雅(こんない よしまさ) と申します。 60歳。札幌市で妻と2人暮らし。 元公務員、現在は自営などその日暮らし。 「プロフィール」をご覧ください。
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